「求人サイトに掲載してもまったく応募が来ない」「見学予約はあるのに、内定を出す前に辞退される」──介護施設の採用担当者から、こうした声を毎月のように聞きます。介護業界の人材不足は年々深刻化していて、従来型の求人媒体だけでは、もう若手や意欲層に届かなくなってきているのが現実です。
そんな中で注目されているのが、TikTokを軸にしたショート動画による採用活動です。この記事では、警備会社のTikTok運用で採用問い合わせ200件超を実現した現場感覚をベースに、介護施設がSNS採用で結果を出すための考え方と具体的な進め方をまとめました。
この記事でわかること
- 介護業界の採用難がなぜここまで深刻化しているのか(最新データ)
- 介護×TikTokで結果が出やすい「型」と実際の成功パターン
- 他業界(警備会社)で200件超の問い合わせを生んだ運用の裏側
- 介護施設が明日から動ける、SNS採用の始め方4ステップ
- 失敗しないための炎上・プライバシーリスク対策
介護業界の採用難の現状──「募集しても人が来ない」は数字にも表れている

まず前提として、介護業界の採用は「他業界とは桁違いの売り手市場」になっています。感覚として「募集しても人が来ない」と感じている方は多いはずですが、その肌感覚は最新の公的データにもはっきりと表れています。
令和5年度の有効求人倍率は3.71倍──全産業平均の3倍以上
厚生労働省の職業安定業務統計によると、介護関係職種の有効求人倍率は令和5年度で3.71倍。全産業平均の1.16倍を3倍以上も上回っています。これは、1人の求職者に対して介護施設側が約4件の求人を出している状態で、単純に「取り合い」になっている構図です。
さらに大都市圏では有効求人倍率が5倍前後まで跳ね上がる地域もあり、都市部の施設ほど「同じ求人媒体に同じような施設が並んで、埋もれる」現象が起こっています。同じ費用をかけて出稿しても、ほかと差別化できていないと反応が返ってこない状態です。
2026年度に約25万人、2040年度には約57万人の不足見通し
厚生労働省の第9期介護保険事業計画によれば、2026年度には約240万人の介護職員が必要ですが、そこから約25万人が不足する見通しです。2040年度になると、必要人数は約272万人、不足数は約57万人まで拡大するとされています。
| 年度 | 必要人数 | 不足数 |
|---|---|---|
| 2026年度 | 約240万人 | 約25万人 |
| 2040年度 | 約272万人 | 約57万人 |
言い換えると、「これから毎年、日本全体の介護現場から数万人単位で人が足りない状態」が続くということ。もはや従来の採用手法だけを続けていて、事業を維持できる時代ではなくなっています。
従来の求人媒体だけでは、そもそも「届いていない」
もう1つ見落とされがちなのが、求人媒体そのものの反応低下です。特に20〜30代の若手層は、いきなり求人サイトを検索するのではなく、「まずTikTokやInstagramでその職場・業界を眺めて雰囲気をつかむ」という行動を取ります。
つまり、SNS上に自社の情報がない=「そもそも候補にすら入っていない」ということ。求人媒体を並べて比較される前段階で、選考プールから外れている可能性が高いのです。
若手がいない業界こそ、SNSで一気に差がつく

ここで多くの介護施設運営者から質問されるのが、「うちみたいなアナログ業界でも本当にSNSで効果が出るのか?」という点です。結論から言うと、アナログで競合がやっていない業界こそ、SNSに投資すると一気に頭ひとつ抜ける状態が作れます。
求職者はまず「働く人と職場」を見てから応募する
若手・第二新卒層の転職活動では、応募前の情報収集がSNSで完結するケースが増えています。事業所名・法人名で検索したときに、TikTokやInstagramに「その施設で働いている人の顔と空気感」が出てくるかどうかが、応募ボタンを押すかどうかの分岐点になります。
ここに何も情報がないと、「ブラックかもしれない」「情報開示に消極的な会社かもしれない」という悪い方向に想像が働いてしまう。逆に、明るい職員の日常が数本流れているだけで、応募の心理的ハードルが一気に下がります。
介護業界はSNS運用に本気で取り組んでいる法人が少ない
もう1つの追い風は、そもそも競合になる法人があまりSNSを本気でやっていないという現実です。飲食・美容・IT業界はSNS採用がすでに飽和気味ですが、介護業界はまだ本格投資している法人が限られています。
これは裏を返せば、今から始めれば「地域で唯一SNSに強い介護施設」というポジションを取りやすいということ。競合が動く前にポジションを取ってしまえば、その後は再生数・フォロワー数の資産が積み上がっていくだけになります。
「職場の空気」は求人票やHPでは絶対に伝わらない
そして最も大きいのが、動画でしか伝わらない情報があるということ。「利用者さんとの距離感」「休憩室の雰囲気」「先輩後輩のやり取り」──こうした「働くリアル」は、求人票の文字や、綺麗に整えられたHP写真では絶対に伝わりません。
ショート動画は、この「文章では伝わらない一次情報」をそのまま渡せる唯一のフォーマットです。だからこそ、雰囲気で職場を選ぶ現代の求職者に強く刺さります。
介護×TikTokで結果が出やすい3つの型

「何を撮ればいいのか分からない」という声もよく聞きます。介護×TikTokの投稿は、実は「職場の雰囲気」「1日密着」「職員紹介」の3つの型を軸にすると、大きく外しません。ここでは、それぞれの型で押さえるポイントを整理します。
型①:職場の雰囲気を切り取るショート動画
いちばん取り組みやすいのが、日常のワンシーンを15〜30秒で切り取る「職場の雰囲気系」の投稿です。休憩室での何気ない会話、朝礼、レク中の笑い声──特別な企画を組まなくても、「ここで働いたら毎日こんな感じなんだ」と想像させられる動画は、それだけで採用効果があります。
ポイントは、演出しすぎないこと。作り込んだプロモーション動画より、ほんの少し編集した「素の空気」の方がTikTokでは伸びやすい傾向があります。
型②:「介護士の1日」密着動画
2つ目は、1日の仕事の流れを追いかける密着動画。「7:00 出勤 → 申し送り → 排泄介助 → …」という時系列で仕事の中身を見せる形式は、求職者が最も知りたい「実際どんな仕事をするのか」に真正面から答えます。
ここでは「大変な部分もちゃんと見せる」ことが逆に効きます。綺麗な部分だけ切り取ると入社後のギャップに繋がりますが、リアルを見せた上で応募してくる人は入社後の定着率が明らかに高くなります。
型③:職員のパーソナリティを見せる紹介動画
3つ目は、職員個人にフォーカスを当てるコンテンツ。「入職2年目のスタッフ」「50代で未経験入社した方」「元学生アルバイトから正社員になった人」など、キャラの立った職員を主役にすると、そのキャラ目当てのファンが付き、指名で応募が来るようになります。
特に「未経験からのキャリア」「介護業界に対するイメージが変わった話」といったストーリー性のあるコンテンツは、業界のネガティブイメージを払拭する効果もあります。
現場系業界の実例:警備会社のTikTokで採用問い合わせ200件超
「介護と警備は違うのでは?」と思われるかもしれません。ですが、「現場系」「人手不足」「若手が来にくい」「業界イメージが硬派に思われがち」という条件はほぼ共通しています。ここでは、弊社が実際に運用支援している警備会社の事例をご紹介します。
実績数値:TikTokフォロワー15万・月間再生数1,000万回超
この警備会社様は、TikTokとInstagramの2軸でショート動画を運用しています。運用の成果として、TikTok15万フォロワー・Instagram4万フォロワー・月間再生数は1,000万回を超え、採用問い合わせは200件超という結果が出ています。
| 指標 | 実績 |
|---|---|
| TikTokフォロワー | 15万 |
| Instagramフォロワー | 4万 |
| 月間再生数 | 1,000万回超 |
| 採用問い合わせ | 200件超 |
成功要因は「エンタメ性」×「業界のリアル」の両立
結果の裏側にあるのが、コンテンツの作り方です。単なる会社紹介動画では絶対に再生されません。TikTokのアルゴリズム上、最初の1〜2秒で「面白そう」「なにこれ」と思わせないと、そこで離脱されてしまうためです。
成功した動画に共通するのは、「エンタメの入り口 → 業界のリアルな中身」という構成。冒頭は笑いや驚きで足を止めて、後半で「実はこの仕事、こんな側面もあるんだ」という気付きに繋げる。この設計ができると、視聴者は「面白かった」で終わらず、「この会社気になる」まで進んでくれます。
介護業界にそのまま横展開できる理由
この警備会社のノウハウは、介護業界にほぼそのまま応用できます。両業界に共通するのは以下の点です。
- 業界に「硬派・きつそう」というイメージがあり、SNSでイメージを塗り替える余地が大きい
- 働いている人のキャラクターが立ちやすく、動画の主役になれる
- 求職者は「怖くない職場か」「変な上司はいないか」を最初に知りたがる
- 職員の日常や仕事風景そのものがコンテンツになる
つまり、警備で効いたコンテンツの型(エンタメ入り口→業界リアル、職員キャラ活用、1日密着)は、介護でも同じロジックで機能する可能性が非常に高い、ということです。
介護施設がSNS採用を始める4ステップ

ここまで読んで「うちもやってみたい」と感じた方向けに、実際にSNS採用を始めるときの手順を4ステップに整理します。重要なのは、いきなり撮影から始めないこと。設計を飛ばして走り出すと、伸びないうえに現場が疲弊して止まります。
STEP1:目的とターゲットを明確にする
最初にやるべきは、「誰を採用したいのか」を1人の人物像レベルまで落とすこと。「20代前半・未経験・第二新卒・地域は事業所から通勤30分圏内」など、具体的なペルソナを1〜2種類に絞ります。ペルソナが決まれば、動画の切り口・撮影に出す職員・投稿する時間帯まで、後の意思決定がすべて速くなります。
STEP2:撮影と投稿の運用体制を作る
次に、誰が撮影して誰が編集して誰が投稿するかの体制を決めます。ポイントは「現場負担を最小にする分担」にすること。理想は、撮影は現場責任者、編集と投稿は外部(運用代行や広報担当)に任せる形です。
投稿頻度の目安は、週2〜3本を最低3〜6ヶ月継続。TikTokは投稿量と継続で評価されるプラットフォームなので、この期間をやり切れない体制でスタートすると成果に届かず、途中で挫折することが多いです。
STEP3:応募導線を先に整えておく
意外と見落とされがちなのが、応募導線です。動画を見た人が「応募してみようかな」と思った瞬間に、プロフィールから3タップ以内で応募フォームに辿り着ける状態を作っておく必要があります。
- TikTok・Instagramのプロフィールに応募リンクを設置
- LINE公式アカウントを挟むと、応募のハードルが下がる
- 応募フォームは3〜5項目までに絞る(電話番号・希望勤務時間くらい)
STEP4:数字を見て改善サイクルを回す
最後は、投稿ごとに「再生数」「保存数」「プロフィール流入数」「応募数」を追いかけて、伸びた投稿の型を再現していくフェーズ。1本の動画のバズを喜ぶより、伸びた要因を分解して2本目・3本目に活かす方が、長期的な資産になります。
再生されない投稿を続けていても改善しないので、月1回は必ずデータを見て、翌月の企画に反映する運用サイクルを組み込みましょう。
炎上・プライバシーリスク対策──介護だからこそ必ず押さえたい

SNS採用のリスク面も正直にお伝えします。介護業界は「利用者様のプライバシー」という他業界にはないセンシティブな要素があるため、運用ルールを事前に固めておくことが必須です。
利用者様の映り込みは原則NGにする
まず絶対に守るべきは、利用者様が特定できる形での映り込みを避けること。介護記録・介助シーン・利用者様のお名前や病状に触れる会話などは、投稿対象外にします。
やむを得ず映り込む場合は、ご本人・ご家族から書面で同意をいただく運用にし、いつ・誰に・何のために撮影したかを記録として残す仕組みを作りましょう。
職員の顔出しは強制せず、ルールを明文化する
職員の顔出しについても、本人の同意なしに動画に出す運用は絶対にNGです。「入社したら勝手にTikTokに顔が出ていた」という状態は、退職リスクどころか労務トラブルにも繋がります。
おすすめは、以下のような形でルールを文書化しておくことです。
- 出演可否は本人の申し出制(同意書ベース)
- 途中で「もう出たくない」となった場合は、過去投稿からも削除する
- プライベート情報(本名・住所・家族構成など)は絶対に出さない
投稿前チェックの体制を必ず作る
最後に、投稿前に必ず2名以上で内容を確認する体制を作ります。「利用者様が映っていないか」「不適切な発言はないか」「業界的にセンシティブなワードは入っていないか」──このダブルチェックをスキップした投稿から炎上が起こるケースがほとんどです。
外部の運用代行を活用する場合も、投稿前の最終確認は必ず施設側で行う運用にしてください。ここを外部任せにすると、現場感覚から外れた投稿が世に出てしまうリスクが上がります。
まとめ:介護業界こそ、いまSNS採用を始める価値がある
ここまでの内容を、最後にもう一度整理します。
- 介護職の有効求人倍率は3.71倍・2026年度に25万人不足という深刻な状況
- 従来の求人媒体だけでは、そもそも若手層に「届かない」時代になった
- 介護×TikTokは「職場の雰囲気」「1日密着」「職員紹介」の3つの型で結果が出やすい
- 現場系業界の警備会社では、同じロジックで採用問い合わせ200件超を実現
- 始めるなら「目的設定→運用体制→応募導線→改善サイクル」の順で設計する
- プライバシーと顔出しのルールを最初に固めておくことが炎上回避の鍵
SNS採用は「一度伸ばした資産が積み上がる」チャネルです。求人媒体への広告費と違い、投稿は消えずに残り、フォロワーもフォロワーを呼びます。競合が少ないうちに始められた法人ほど、翌年以降の採用が明確に楽になります。
「うちの施設でも本当に効果が出るのか」「どんな動画から撮り始めればいいのか」──こうしたお悩みがあれば、これまでの支援実績をもとに、貴施設の状況に合わせた具体案を無料でお出しします。
株式会社Add Value 代表
TikTok・Instagram運用20案件超を並行支援。警備会社のTikTok採用で問い合わせ200件超、支援先の月間再生数は1,000万回超えなど、現場系・採用難業界のSNS採用に強み。プロフィール詳細はこちら →

