採用マーケティングとは、商品を売るときのマーケティングの考え方を採用に使い、候補者に知ってもらうところから入社までを設計する活動です。「求人を出しても応募が来ない」「応募はあるのに辞退される」と感じていませんか?
この記事では、従来の採用との違い、代表的な手法、進め方、SNSの役割を解説します。数字の見方や自社の支援事例も紹介しますので、これから取り組む方はぜひ最後までご覧ください。
この記事の要点
- 採用マーケティングは、まだ転職や就職を考えていない人も含めて、候補者との関係を作る活動
- 2027年卒の大卒求人倍率は1.62倍で、企業の採用意欲が高い状況が続く(リクルートワークス研究所)
- 手法は採用サイト、SNS、採用広報、広告、リファラル、イベントなど。1つで全部をまかなう必要はない
- 進め方は「採用人数から逆算→人物像→メッセージ→施策→計測」の5ステップ
- SNSは、知ってもらう役割と、応募前に確かめてもらう役割を担う
採用マーケティングとは?
採用マーケティングとは、候補者を「お客様」のように考え、知ってもらう段階から応募、入社までの流れを作ることです。求人を出して応募を待つだけでなく、まだ転職を考えていない人にも自社を知ってもらいます。
たとえば商品の販売では、「誰に、何を、どこで伝えるか」を決めて、購入までの流れを整えます。採用でも同じように、「どんな人に、自社のどんな魅力を、どの媒体で伝えるか」を決めていきます。
なぜ今、採用マーケティングが必要なのか
理由は、求人の数が仕事を探す人の数を上回り、待っているだけでは候補者に見つけてもらいにくいからです。リクルートワークス研究所「第43回ワークス大卒求人倍率調査(2027年卒)」(2026年4月23日公表)によると、大卒求人倍率は1.62倍で、求人総数74.8万人に対して民間企業就職希望者は46.2万人でした。また、厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年9月分)」によると、有効求人倍率(季節調整値)は1.19倍です。有効求人倍率とは、仕事を探す人1人あたりに何件の求人があるかを示す数字です。

もう1つの理由は、入社後のミスマッチです。厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」によると、大学卒の就職後3年以内の離職率は33.8%です。たくさん集めるだけでなく、合う人に選んでもらうことが大切です。
採用マーケティングと従来の採用の違いは?
一番の違いは、今すぐ応募したい人だけでなく、将来の候補者まで相手にすることです。従来の採用は、募集のある時期に求人媒体で集める形が中心でした。

| 比べる点 | 従来の採用 | 採用マーケティング |
|---|---|---|
| 相手 | 今、仕事を探している人 | まだ探していない人も含む |
| 期間 | 募集のある時期 | 継続的に |
| 主な手段 | 求人媒体、人材紹介 | 採用サイト、SNS、広告、イベントなど |
| 見る数字 | 応募数、採用数 | 認知から入社までの各段階 |
| 向いている場面 | 急いで人を採りたい | 中長期で採用力を高めたい |
どちらが正しいという話ではありません。急ぎの採用には求人媒体が向いており、採用マーケティングは成果が出るまで時間がかかります。両方の違いはSNS採用と求人媒体の比較でも解説しています。
採用マーケティングの代表的な手法は?
代表的な手法は、採用サイト、SNS、採用広報、広告、リファラル採用、イベントです。候補者の段階によって、合う手法は変わります。
| 手法 | 内容 | 主な役割 | 気をつける点 |
|---|---|---|---|
| 採用サイト | 仕事内容や働き方を詳しく載せる自社サイト | 応募前の確認 | 作って終わりだと見られない |
| SNS | 動画や投稿で社内の様子を発信 | 認知、応募前の確認 | 続ける人手が必要 |
| 採用広報 | 社員の話や会社の考えを発信 | 興味を持ってもらう | 成果が見えるまで時間がかかる |
| 広告 | 狙った人に求人や動画を届ける | 認知、応募 | 費用がかかる |
| リファラル採用 | 社員の紹介で候補者と出会う | 応募 | 社員の協力が欠かせない |
| イベント | 説明会、職場見学、インターンなど | 興味から応募へ | 準備と当日の人手が必要 |
リファラル採用とは、社員に知人を紹介してもらう採用方法です。すべてを同時に始める必要はありません。まずは足りない段階を見つけて、そこに合う手法を1つ選びましょう。
採用マーケティングでよくある失敗は?
よくある失敗は、人物像を決めないまま手法から始めることです。「他社がやっているからTikTokを始める」と進めると、再生数は伸びても応募につながらないことがあります。もう1つは、担当者1人に任せきりにすることです。社員の出演や現場の情報が必要になるため、経営層や現場の協力を最初に取りつけておきましょう。バズと応募の違いはTikTok採用でバズっても応募が来ない理由でも解説しています。
採用マーケティングの進め方は?
進め方は、採用人数から逆算し、人物像、メッセージ、施策、計測の順に決める5ステップです。

手順1:採用人数から必要な数を逆算する
目標の採用人数から、必要な内定数、面接数、応募数、問い合わせ数を計算します。たとえば3名採用するときに、応募から入社までの割合が5%なら、応募は60件必要です(数値は計算の例)。詳しい考え方は採用SNSの効果測定で解説しています。
手順2:採りたい人物像を決める
年齢や経験だけでなく、仕事を選ぶときに何を大切にする人かまで決めます。決め方は採用SNSのペルソナ設計が参考になります。
手順3:伝えるメッセージを決める
給与や福利厚生だけでなく、「なぜこの人がこの会社を選ぶのか」を言葉にします。大変な面も含めて正直に伝えると、ミスマッチを減らせます。
手順4:施策を選ぶ
足りない段階に合わせて選びます。知られていないならSNSや広告、応募前に不安を持たれているなら採用サイトや社員の発信です。
手順5:数字を見て直す
再生数だけで判断せず、応募や面接までつながっているかを確認します。毎月見る数字を3つほどに絞ると続けやすくなります。
採用マーケティングでSNSはどんな役割を持つ?
SNSの役割は、まだ自社を知らない人に見つけてもらうことと、応募前に働く様子を確かめてもらうことの2つです。求人票では伝わりにくい人柄や雰囲気を、動画で見せられます。

| 候補者の段階 | 候補者の気持ち | 合う施策の例 |
|---|---|---|
| 認知 | この会社を初めて知った | TikTok、Instagram、広告 |
| 興味 | どんな会社か少し気になる | 社員の紹介動画、採用広報 |
| 応募前の確認 | 自分に合うか確かめたい | 採用サイト、よくある質問の投稿 |
| 応募 | 話を聞いてみたい | 見学案内、応募フォーム、DM |
総務省「令和7年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」(2025年12月実施、13〜79歳の1,800人)によると、Instagramの利用率は全年代で54.8%、20代で82.6%、TikTokは全年代で36.7%、10代で67.9%です。若い世代に届けたい採用では、SNSを検討する価値があります。一方で、年代が上がると利用率は下がるため、採りたい人に合わせて選びましょう。媒体の全体像はSNS採用とは、役割の考え方は採用にSNS活用が必要な理由をご覧ください。
採用マーケティングの成功事例は?
弊社の支援事例では、警備会社のTikTok・Instagram運用で採用問い合わせ200件超、整体・マッサージ系サロンで採用問い合わせ80件超につながりました。

| 項目 | 警備会社 | 整体・マッサージ系サロン |
|---|---|---|
| 4万フォロワー | 1万フォロワー | |
| TikTok | 15万フォロワー | 5,000フォロワー |
| 月間再生数 | 1,000万回超え | 750万回超え |
| 採用問い合わせ | 200件超 | 80件超 |
どちらも、ショート動画の企画、投稿設計、アカウントの改善、問い合わせ導線の設計を支援しました。導線とは、投稿を見た人が応募するまでの流れを指します。再生数を伸ばして終わりにせず、問い合わせまでの流れを作ったことが共通点です。なお、結果は業種や地域、募集条件によって変わります。他の事例はSNS採用の成功事例で紹介しています。
採用マーケティングの費用とデメリットは?
費用は、自社で進めるなら主に人件費、外部に任せるなら依頼する範囲によって変わります。弊社の場合、SNS運用代行はAプランが月額30万円(6投稿/月)からで、契約期間は6ヶ月〜です。大枠のプランをもとに、初回MTGとヒアリングシートの回答を踏まえてカスタマイズし、認識をすり合わせてから運用を始めます。
- デメリット1:成果が出るまで時間がかかる
- デメリット2:発信を続ける人手と、社内の協力が必要
- デメリット3:応募数の増加に直接つながったかが見えにくい施策もある
向いているのは、毎年継続して採用する会社や、求人媒体だけでは候補者に出会いにくい会社です。向いていないのは、1〜2ヶ月で急いで採用したい会社や、応募への対応体制がない会社です。
「この会社で働きたい」と思われる印象の育て方は、採用ブランディングとはで解説しています。
社員や仕事の情報を届ける方法は、採用広報とはで解説しています。
採用マーケティングでよくある質問
Q. 採用マーケティングと採用ブランディングの違いは何ですか?
A. 採用マーケティングは候補者に知ってもらい応募につなげるまでの流れ全体を作る活動で、採用ブランディングはその中で「この会社で働きたい」と思われる印象を育てる活動です。
Q. 中小企業でも採用マーケティングはできますか?
A. できます。すべての手法は必要なく、足りない段階に合う施策を1つ選んで始めましょう。企業規模ごとの考え方も参考にしてください。
Q. どのくらいで成果が出ますか?
A. 施策によって違います。広告は比較的早く反応が見え、SNSや採用広報は時間がかかります。急ぎの採用は求人媒体と併用しましょう。
Q. まず何から始めればいいですか?
A. 目標の採用人数から必要な応募数を計算し、認知、興味、応募のどこが足りないかを確かめましょう。そのうえで合う施策を選びます。
Q. 求人媒体はやめてもいいですか?
A. すぐにやめるのはおすすめしません。求人媒体は今仕事を探している人に届く手段です。SNSなどの効果が見えてきてから、掲載の量を見直しましょう。
採用全体の方針の決め方は、採用戦略の立て方で6つのステップに分けて解説しています。
まとめ:採用マーケティングは足りない段階を見つけることから
- 採用マーケティングは、候補者に知ってもらうところから入社までを設計する活動
- 従来の採用と対立するものではなく、急ぎの採用には求人媒体を併用する
- 採用人数から逆算し、人物像、メッセージ、施策、計測の順に進める
- SNSは認知と、応募前の確認の両方に使える
まずは、今年の採用人数から必要な応募数を計算してみましょう。企業規模別の考え方は企業規模別・採用に最適なSNSをご覧ください。
参考情報(2026年11月4日確認)
株式会社Add Value 代表
企業ごとに施策を変えながら採用の成果にコミットするSNS運用代行会社を経営。Instagram・TikTok・採用媒体・Threads・YouTube・Meta広告・簡易採用LPまで対応し、約20案件を並行支援。警備会社のSNS採用で問い合わせ200件超、支援先の月間再生数は1,000万回超えなどの実績を持つ。プロフィール詳細はこちら →


